フィンランド語でちょっとした休憩のことをピエニ・タウコ(pieni tauko)という。フィンランドの国民学校(Kansanopisto)では、ちょくちょくピエニ・タウコがあった。
お手洗いに行く、建物の外に出てタバコを吸うなど各々好きなように過ごす。ちょっとコーヒーでも、となれば、ピエニ・カハヴィタウコ(kahvitauko)になる。
ただ、3時のおやつの時間はちょっと特別だ。2時半過ぎには、教師や生徒たちは連れ立って、いそいそと食堂へおもむき、一時間ほどかけて、コーヒーや紅茶、お菓子をいただく。いわば正式のカハヴィタウコだ。
シナモンロール、カレリアンピーラッカ、プリンやカシスのゼリー、アイスクリームなど、フィンランドの家庭的なおやつが日替わりで並ぶ。しかも、ほとんどは学校の食堂専属のシェフあるいはパティシエによる手作りで、その日の焼き立て、作り立てだ。
フィンランドの人たちは、それらのお菓子を小さなスプーンで食べる。日本でケーキやフルーツ用に使う小さなフォークは見たことがなかった。学校にあったスプーンはハックマン(HACKMAN)だった。
フィンランドでは普通、食事でスプーンを使うのは子供っぽいとみられがちだが、おやつは別なのか、スプーンで食べるのが習わしのようだ。
教師と生徒たちが肩を寄せ合ってテーブルに並び、嬉しそうに小さなスプーンでお菓子をすくっている光景はちょっと微笑ましい。伝統的なフィンランドの大家族ってきっと、こんな風だったんだろうなと思った。
そうやって、コミュニケーションをとりつつ、美味しいおやつとコーヒーで脳や体にエネルギーを補給して、次の授業に備える、かどうかは置いといて、とてもいい気分転換だった。
世界的に水準が高いと言われるフィンランドの教育は、日々こんな風に、小さなスプーンで一匙ずつ食べるおやつが支えているのかもしれない。ただし、9ヶ月後、人間的に一回り成長して国民学校を卒業するころには、身体のほうも二回りほど横方向に成長することにもなるのだが。
コメント