フィンランド語のR

Kipina, Ylinen Finland 2012
Kipina, Ylinen Finland 2012

フィンランド語の「R」の発音は、英語の「R」とは違う。英語では、舌はどこにも付けないが、フィンランド語では、舌先を軽く上顎につけて、息を吐きながら震わせて発音する。

ある時、「R」を名前に含むヤルノ(Jarno)という名前のクラスメイトに、フィンランド語の「R」が難しい、と言うと、

「日本人の”Ru”は”Du”に聴こえる。君には僕の名前を発音することは、一生できないだろう。まあ、大目に見てやるから気にするな」、というようなことを云われた。

「正しい発音で、君の名前を呼びたいから、”R”をマスターしたいんだ。”R”を発音している時の、君の口の中を見せてもらえないだろうか」、とダメ元で頼んでみたら、しぶしぶ、口を大きく開いて「R」を発音して見せてくれた。

「RRRRRRRR……、RRRRRRRR…… 」

舌の先が上顎に当たって、プルプル震えている様子がはっきり見えた。

「RRRRRRRR……、英語とは違うのだよ、英語とは! RRRRRRRR……」

「ありがとう、わかったから、もういいよ」

「RRRRRRRR……」

そのおかげかどうか、フィンランド語の「R」の発音は、コツがのみこめたと思う。
その後、日本に戻ってきてからは、「R」の発音を気にする必要はなくなった。ただ、あのときヤルノが見せてくれた、プルプルと震える舌の動きは、映像として脳裏に焼き付いてしまった。忘れたくても、一生忘れることはできないだろう。

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