麺をすする音

Stockholm 2003
Stockholm 2003

フィンランドとスウェーデンを旅行していたとき、矢野顕子ではないが、無性にラーメンが食べたくなったことがある。

ところが、滞在中のストックホルムのホステル近くのスーパーマーケットには、スープのないタイプのインスタントラーメンしかなかった。

チャーシューもナルトもなくていい、そんな贅沢は言わない。でも、スープのないラーメンはラーメンではない、などと己の主義主張を振り回してみても仕様がない、異国の地では多勢に無勢。選択の余地は全くなかった。

とりあえずそれらしいものを適当に買い込み、ホステルに戻って、早速共同キッチンで独自の「スープ有りラーメン」作りに取り掛かった。

といってもインスタントラーメンに同封されていた謎の粉末調味料にお湯を加えるだけのことだ。北欧人はその汁を捨ててしまうのが習わしのようだ。

ホステルのダイニングルームの片隅に、出来上がったラーメンを自らサーブし、日本から持参していた割り箸をパキンと割って、念願のラーメンを食べはじめた。

ところが、すぐに背中に異様な殺気を感じたので、そちらを振り返ってみると、少し離れたテーブルで食事をしていた四人組の女の子グループから、敵意に満ちた視線がこちらに差し向けられていることに気がついた。

何だろうと思ったら、どうやらずるずると麺をすする音に対する非難の視線だったようだ。一緒にラーメンを食べていたうちの奥さんから指摘されて気がついた。

案外自分が立てている音には気づかないものだ。久しぶりに食べるラーメンに夢中になり、スウェーデンにいることをすっかり忘れていた。

西洋と日本の文化的な違いを体感した瞬間だった。郷に入れば郷に従え。訪れる場所の伝統や習慣、マナーを尊重する気持ちがやはり大切だ。

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