圧縮されたイメージの吸引力、ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ展(DIC川村記念美術館)

日々
JR佐倉駅, 令和元年5月
JR佐倉駅, 令和元年5月

I put the Victoria and Albert Museum in a still larger envelope which I placed in the program of the Royal Danish Ballet, in the form of an advertisement for museums, boric acid, wallpaper.

Donald Barthelme, “Cornell” (Exhibition Portfolio, Catalogs, Leo Castelli Gallery, NY, Feb 1976)

私はヴィクトリア・アルバート美術館をさらに大きな封筒に入れ、それを美術館の広告、ホウ酸、壁紙という形で作られたデンマーク王立バレエのプログラムのなかに入れた。

ドナルド・バーセルミ「コーネル」柴田元幸 訳(『夜の姉妹団―とびきりの現代英米小説14篇』所収)朝日文庫

短篇小説が好きだ。短い時間ですぐに読めてしまえるから。でもだからといって、すぐに理解できているかというと、そうともかぎらない。短い話のなかにダイヤモンドのようにぎゅうっと圧縮されたイメージは、頭の裏側にそっと逗まり、時間をかけてじわりじわりと解凍されていく。

ジョゼフ・コーネルの「箱」もどこか短篇小説を思わせるところがある。コーネルの手元に集合したオウム、天体図 ハシゴ 貝殻 パイプ、コルクの球、バレエダンサー、モーツァルトのピアノ・ソナタといったメランコリーなオブジェたちは、箱の中でただじっと大人しくしているわけではない。

多次元の遠近法を駆使して一処に配置されたそれらのモノたちは、圧縮されたイメージの波動をじわじわと照射し、見るモノの視神経を強烈に刺激する。剥がれかけた壁紙の向こう側まで通じているかのようなイメージのブラックホールと、それを見ているこちら側との間には、箱にはめ込まれた薄い硝子板が 一枚あるだけだ。

先日、千葉県の佐倉市にあるDIC川村記念美術館で開催されていたジョゼフ・コーネル展を観ていて、「手元において毎日眺めていたいな」と、ふと思ったが、そんなことにでもなったら、いつか我慢できずに硝子板を外してしまうだろう。そう考えて少し怖くなった。

とりあえず図録でもと思ったら、担当学芸員さんがとてものんびりした方で、まだ完成していないんですよ、と係の人が図録予約の用紙を手渡してくれた。ちらっと見せてくれた図録見本の一部から小さな宝石箱のような本を想像して、翌日予約し、すぐに代金の振込をした。6月末には発送されるそうだ。到着が待ち遠しい。名古屋から佐倉市まではるばる出かけたかいがあったというものだ。


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