買ったはいいけれど、読まずに寝かせてある本がある。ときどき本棚を眺め、手に取ってパラパラとやるのだが、すぐに棚に戻してしまう。
そうしてしばらくたったある時、本が呼ぶというのか、読むタイミングがあって、すんなり読み始めることができたりする。
名古屋市北区のまなみ古書店で見つけたコニー・ウィリスの単行本もそんな一冊だったが、9ヶ月ほど経った昨日、そのドゥームズデイ・ブックを読み始めたらページをめくる手が止まらなくなった。ちょうどクリスマスの時期に話が始まるという偶然。本が呼んだのかもしれない。
出だしから不穏だ。土砂降りだし、部長代理?の名前がギルクリスト(Gilchrist)って、名前からしてヤバそう。
それに、キヴリンの歴史観察記録としての「ドゥームズデイ・ブック」は、ボトルメール型のバリエーションではないか。ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「たったひとつの冴えたやりかた」で、コーティーが記録した〈リフト〉近辺を舞台にした物語、のちにデネブ大学中央図書館で主任司書のモア・ブルーがコメノのカップルに貸し出すことになるあの冒険譚と同類の。
嫌な予感しかしない。キヴリンどうなっちゃうんだ、ってつぶやいたら、横にいたうちの奥さん(とうの昔に読了済)がニヤリとした。
『ドゥームズデイ・ブック』はオックスフォード大学史学部シリーズの長編第一作目にあたる。短篇の「空襲警報」、『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』、『ブラックアウト』&『オールクリア』と続いている。しばらく楽しめそうだ。
同シリーズの最新作 The Spanner in the Works が来年6月に刊行予定という情報もある。英語で読むのはハードルが高いが日本語訳がでるまで待っていられる自信はない。
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