ここ何年かは、クリスマスカードのやり取りをするぐらいだったフィンランドの知人から、先日めずらしくEメールが届いていた。
彼の奥さんが初めて日本を訪れることになったので、中部国際空港セントレアで出迎え、目的地へ向かう列車に間違いなく乗車できるよう手引きをしてほしい、という内容だった。
報酬は乾燥キノコ。去年の秋、フィンランドのタンミサーリ(エケナス)の森で採取されたものだ。ぼくは即座にその依頼を引き受けると返信した。
ただし、待ち合わせ場所は空港ではなく名古屋駅にしてほしいという要望を出した。正直、セントレアまで出向くのが面倒だったし、そもそもセントレアで名鉄名古屋駅行きの列車に乗るのは、Karjaaの駅でHanko行きの電車に乗り換えるより簡単なことだ。
Eメールの送り主は、ぼくとうちの奥さんがフィンランドのフォルケホイスコーレでお世話になった写真学科の先生だ。彼の奥さんには会ったことはなかったが、7年前、ぼくがヘルシンキに彼をたずねたときにはまだ婚約者だった彼女の、photogravureによる美しいモノクロのポートレートがキャビネット上に飾られていたのを思い出した。
事前に約束した通り、日曜日の午前11時半ごろ名鉄名古屋駅の西改札口前で待っていると、セントレアから到着した列車が吐き出した、スーツケースを引っ張る外国人含有率の多い乗客の中に、彼女の顔を識別することができた。
彼女と連れの同僚の女性、ぼくとうちの奥さんの四人は、近くのマカロニという名前のカフェで一旦腰を落ち着かせ、紅茶を飲みながら、彼女らの目的地である徳島までのルートと乗換を確認し、報酬の乾燥キノコを受け取った。
それに加えて、フィンランド土産としてFazerin Sininen、Oululainenのjälkiuuni、フィンレイソンのムーミン柄の鍋つかみまで頂いてしまった。大したことはしていないのに、いいのだろうか。
カフェを出てすぐ近くにあるJRツアーズ広小路口支店で、新神戸までの新幹線自由席切符の購入を手伝い、ぼくとうちの奥さんも入場券を買ってプラットホームまで同行した。
そこへちょうど入ってきた博多行きのぞみ700系を見て「bullet trainだ!」と浮かれ騒ぐ二人に、「新神戸駅の前で目を覚まさないと、弾丸のようにEnd of Japanまで連れていかれてしまうよ」と注意を与えて乗車させ、混み合う自由席車両に二つ空席を見つけて無事着席したところを見届けると、のぞみは定刻通り13:13に発車した。
やれやれ、なんとか任務完了。あとは日本で楽しく過ごしてくれれば、ぼくにとっては、それが何よりの報酬である。
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