笑うフィンランド人

円頓寺七夕まつり 2009
円頓寺七夕まつり 2009

……ここ二世紀のあいだ、ついぞ経験したことのない七月の白い炎熱に、町はどっぷりと漬かっていた。焼けただれた屋根の上で、陽炎がゆらめき、町中の窓という窓は開け放たれていた。萎れた木が投げかける薄い陰の下で、老婆たちが庭木戸のそばのベンチに腰かけ、汗をかいてうだっている。

A&B・ストルガツキイ『世界終末十億年前―異常な状況で発見された手記』深見弾・訳 群像社

フィンランド人の友人とその彼女と、夏のある日、名古屋の街を連れ立って歩いていたら、突然、彼女(20代半ば)がゲラゲラと笑い出した。可笑しなことは何もないのに、どういうわけか笑いのスイッチが入ってしまったようだ。

ぼくらはしばらく立ち止まり、突然の激しいゲリラ的な笑いに襲われ、ヴィスコンティの映画に出ていたシャーロット・ランプリング似の横顔を真赤にしてもがく彼女を、見守っていた。

笑いの嵐が過ぎ去りかけるころを見計らい、
「どうしたの? 大丈夫?」と言うと、
「暑すぎて笑いが止まらなくなっちゃった」と、涙を拭いながら恥ずかしそうに答えた。

たしかに、外出するのが憚られるほどの暑さではあったので、身体の熱中症対策には気を使ったつもりだったが、フィンランドの人にとっては、むしろ精神にこたえる暑さだったのかもしれない。

それにしても、クールビューティーなフィンランド女子を、あそこまで追い詰める名古屋の夏って、やっぱりすごいなと感心した。

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