日本でおしゃべりを表すオノマトペは、例えば「ペラペラ」だが、フィンランドでは「パラパラ」となるらしい。
ユヴァスキュラ郊外にある、友人のご両親が住む実家におじゃましたときのこと。お父さんが手を耳に当て、携帯電話で話す身振りをしながら、「パラパラパラパラ」と言って、お母さんの長電話を揶揄する場面があった。
僕が、日本では「ペラペラ」といいます。うちの奥さんも、よくおしゃべりしているというと、お父さんは、ふうっとため息をついて「そういうところは世界共通なのかな。やれやれ」というようなことをいっていた。
フィンランドの「パラパラ」は、丸っこく立体的な金平糖が口の中でパチパチッと弾んで、次第に溶けて消えていくように、話題がどちらへ転ぶかわからず、とりとめがなさそうだ。
日本の「ペラペラ」も、薄く細かい平面的な木の葉が風に舞い、その場限りのおしゃべりがヒラヒラ飛んでいって戻ってこなさそうだ。
フィンランドと日本で、「パ」と「ペ」の違いはあるが、交わす言葉と意味は儚く消えて、人と人の間で、楽しい気分の記憶だけがぼんやりと残る。人と人の間に、言葉では直接指し示すことのできない何か楽しいものや面白いことを求める生き物を、あるいは「人間」と呼ぶのだとしたら、「パラパラ」や「ペラペラ」は、とても人間っぽいことなのかもしれない。
ところで、「ガミガミ」はフィンランドでは何というのだろう。「ガメガメ」とかだろうか。あのとき、ユヴァスキュラのお父さんに訊いておけばよかった。
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