
フィンランドの11月は……、特に何もない月、という印象だ。
10月の初雪なんかなかったかのように、雨がポショポショと降るし、クリスマスにはまだ日がある。暗い、寒い、でもまだ雪はない、の三拍子揃った11月は、ほとんどのフィンランド人にとって、気の滅入る月にちがいない。
11月はさっさと済ませて、ウキウキな12月(Joulukuu)に進もうぜ、とか、なくてもいいんじゃない? と陰では邪魔者扱いをされていそうな、地味で憂鬱で曖昧で記憶にも残らない退屈な月かもしれない。
でも、そんなフィンランドの11月が嫌いではなかった。もともと静かなフィンランドでも、とりわけ静かで穏やかな月だ。
また、ミドルグレーの空が美しい「あわい」の11月は、生者と死者があいまいになる「諸聖人の日(Pyhäinpäivä)」が巡ってくる神秘的な月でもある。数字の1が二つ並んでいるのも、フィンランドのデザインのようにミニマムで美しい。
11月はフィンランド語で、Marraskuuという。-kuu は「月」という意味だが、Marras-は何だろう。だれかに教わったような気がするが憶えていない。
Particularly if you’re single, some Mondays in late November or early December make you feel as if you’re in death’s waiting room. The summer holidays are a distant memory, the new year still far in the future: the proximity of nothingness is unfamiliar.
Michel Houellebecq, “Annihilation” Translated from the French by Shaun Whiteside


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