#035 オリジナルの作者は死神かもしれない、作者不詳(ジェフリー・アーチャー)「死神は語る」

Rautatientori Helsinki, Syyskuu 2005
Rautatientori Helsinki, September 2005

There was a merchant in Bagdad who sent his servant to market to buy provisions and in a little while the servant came back, white and trembling, and said, Master, just now when I was in the market-place I was jostled by a woman in the crowd and when I turned I saw it was death that jostled me.

Anonymous (Jeffrey Archer), “Death Speaks”

バグダッドに住む一人の商人が、召使いを市場へ買物に行かせた。しばらくすると召使いが真っ青な顔をして震えながら戻り、主人に報告した。「だんな様、今しがた市場の人混みのなかである女と体がぶつかり、振りかえってみたところその女は死神でした。

作者不詳(ジェフリー・アーチャー)「死神は語る」永井淳 訳(『十四の嘘と真実』所収)新潮文庫

バグダッドの市場で女の死神に出会った召使いは、馬に飛び乗りギャロップでサマラの町に逃げていく。召使いは死の運命から逃げ切ることができるのだろうか。

天性のストーリーテラーであるジェフリー・アーチャーが、ストーリーテリングの好例と評し、作者の才能を絶賛した「死神もの」(というジャンルがあるかどうか知らないが)の傑作。

オリジナルの作者は不明。まさか死神からは逃れられないことを後世に語り継ぐために、死神自身が書き綴った物語なんてことはないだろうけれど。

女の死神というのは珍しいのではないか。地の果てまで追いかけてきそうな、死神みたいな女(あるいは男)は現実にいるかもしれないが。どちらにしても恐ろしいことには違いがない。


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