短篇小説

#017 記憶の層にはさまる斎藤、カフカ『変身』高橋義孝 訳

Kallio Helsinki 2012 グレゴール・ザムザがある朝のこと、複数の夢の反乱の果てに目を醒ますと、寝台の上で自分がばけもののようなウンゲツィーファー(生け贄にできないほど汚れた動物或いは虫)に姿を変えてしまっていることに気がつ...
短篇小説

#016 ディケンズに長期勾留される男たち、イーヴリン・ウォー「ディケンズを愛した男」中村融 訳

Helsinki 2006「虫や蟻を寄せつけずにいるのはたいへんなんだ。二冊はだめにされてしまった。でも、ある油の作り方をインディオたちが知っていて、それが役に立つ」マクマスター氏は手近の包みをほどき、仔牛革で装丁された本を手渡した。それは...
短篇小説

#015 サキ「スレドニ・ヴァシュタール」、口うるさい女性に対する無口な反逆

Ylinen Finland 2003病弱で奔馬のような想像力の持ち主である10歳の孤独なコンラディンが、従姉で保護者の口うるさい「あの女」ミセス・デ・ロップに「絶対内緒」で飼っていたもの、それはフーダン種の牝鶏と大イタチのスレドニ・ヴァシ...
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日々

スマートフォンと鼻くそほじり

raitiovaunussa Helsinki tammikuu 2004「あれか? わからん。けど、こうじゃないかと思うことはある。いいかい、あのサブロボットはデイブの〈指〉なんだ。いつもそう言ってきただろう。で、思うにだ、デイブが気が触...
フィンランド

フィンランド人と血液型

自分自身の血液型を知っているフィンランド人に出会った例がない、というのは偶然だろうか。フィンランド人との会話の中で、あなたは自分の血液型を知っていますか? と、おっかなびっくり尋ねてみたことが何度かあったが、首をかしげるばかりではっきりと答
スウェーデン

麺をすする音

Stockholm 2003フィンランドとスウェーデンを旅行していたとき、矢野顕子ではないが、無性にラーメンが食べたくなったことがある。ところが、滞在中のストックホルムのホステル近くのスーパーマーケットには、スープのないタイプのインスタント...
フィンランド

KarōshiとAvantouinti

Hanko Finland 2003「日本では働きすぎで死んでしまう人がいるって聞いたけど、本当なの?」留学先のフィンランドで受講していた英語クラスで、先生のEricaさんが、ロシア人、リトアニア人、ウクライナ人、中国人そしてフィンランド人...
フィンランド

IKEAのミートボール

『IKEA 2018 やっぱり、家がいちばん』先日、郵便受けに約20センチ四方、厚さ1センチほどのカタログが投函されていた。表紙に大きな白い字で「IKEA®」とある。
フィンランド

Tuomari Nurmioとアキ・カウリスマキ

アキ・カウリスマキの映画に、素のまま出演できそうな雰囲気の人物をときどき見かける。たとえば、フランスの小説家ミシェル・ウエルベック(1958-)、イギリスのシンガー・ソングライターのビリー・ブラッグ(1957-)、スロベニアの哲学者スラヴォ...
日々

十月の信頼できない海馬

マーティンは、秋がまたやってきたのを知った。犬が、秋の風と霜と、木の下で醸酵したリンゴの匂いをもって走りこんできたからだ。犬は、時計のゼンマイのようなその黒い毛のなかに、キリン草、夏の名残りのほこり、ドングリの殻、リスの毛、飛び去ったコマド...
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