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ずっと低空飛行

日々

At the last moment, with a bare twenty feet of runway left, Gould sat back sharply in his seat, almost pulling the aircraft into the air. It rose steeply over the broken concrete causeway, banked and made a low circuit of the sea before setting off inland.

J. G. Ballard, “Low-Flying Aircraft” (Bananas, 1975)

 あわやという瞬間、滑走路が残りわずか二十フィートになったところで、グールドは飛行機を空中にひっぱり上げんばかりに、急激に座席上で腰を引いた。機は壊れたコンクリート築堤上を急角度で上昇し、斜めになって海上で低く旋回すると、内陸へと発っていった。

J・G・バラード「低空飛行機」野口幸夫 訳(『J・G・バラード短編全集4』所収)東京創元社

名古屋の本山と自由ケ丘のちょうど中間ぐらいのところに、小さな喫茶店がある。コーヒーが美味しいのはもちろん、静かで清潔で、気持ちの落ち着く場所だ。4月最後の水曜日に、ほっと一息つきたくなって、散歩ついでに出かけていった。

カフェではなく喫茶店という店の雰囲気そのままの女店主に、新型コロナウィルスの影響はあるか? とたずねると、「コーヒー豆の仕入れが不安だけれど、うちはずっと低空飛行だし、いまのところ売上は普段とあまり変わらないんだよね」と、ゴールデンウィークの青空のように爽やかに微笑んだ。

低空で飛ぶ女店主が淹れてくたグァテマラを飲んで、ほっ、となった。


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