PR

#001 星新一「おーい でてこーい」、超時空ショートショート

短篇小説
名古屋駅 JRゲートタワー 2015
名古屋駅 JRゲートタワー 2015

都会から離れた小さな社で発見された「穴」が「原子炉のカス」、「引き取り手のない浮浪者の死体」、「かつての恋人ととった写真」などを始末してくれる。現代の多欲追求社会を痛烈に批判した超時空ショートショート。メビウスの帯型に属する。

穴は、捨てたいものは、なんでも引き受けてくれた。穴は、都会の汚れを洗い流してくれ、海や空が以前にくらべて、いくらか澄んできたように見えた。
その空をめざして、新しいビルが、つぎつぎと作られていった。

星新一「おーい でてこーい」(『ボッコちゃん』所収)新潮文庫

不要品は捨ててスッキリというのは、どこかファシズムにつながっているようで気持ちが悪い。欲望全開社会は最後には、人間の手に負えないゴミをどうするかという矛盾につきあたる。

その最悪の解決方法がファシズムかもしれない、と思うと恐ろしくなる。最近、どうも日本の海や空が澄んできているように思えるのだが、気のせいだろうか。

安部公房の長編小説『方舟さくら丸』でも、「核シェルター」に何でも流せる水洗トイレがあったのを思い出した。

コメント