ショウジョウバエ、だろうか。コバエの二つ三つがダイニングテーブルの上空を優雅に飛行している。
キンチョールを配備して一気に殲滅すればいいのだろうが、テーブルやゴミ箱の蓋の上に着陸したところを、絞った濡れ布巾をシャッと投げつけて、一匹ずつコツコツ仕留める。
今年の夏もこの戦法でずいぶん退治した。一度に大きめのやつ五匹を撃墜するという戦績も挙げた。これによって家庭内の階級が特進することはないが、コバエ飛行隊には恐れられているかもしれない。
それにしても、十月になったというのに、次々にわいてくるのはどういうことか。ふと19世紀ドイツの哲学者の箴言が脳裏をかすめ、不意にその言葉の意味を知る。
そういうことだったのか、アルトゥール!
蠅を叩きつぶしたところで、
萩原朔太郎「猫町」のエピグラフ
蠅の「物そのもの」は死には
しない。単に蠅の現象をつぶ
したばかりだ。―
ショウペンハウエル。
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