フィンランドの国民学校で、授業中にエミネムのことが一瞬話題に挙がったことがあった。隣りの席にいたエディタに、小さな声で「エミネムって何?」と尋ねた。エディタはリトアニア人の、当時10代後半の若者。
「クソみたいなラッパー」とエディタ。
「どんなことを歌っているの?」ときくと、不機嫌そうに「あなたは知らないほうがいい」と、30代半ばの前若者であった僕の耳元に囁いた。「教えてくれてもいいのに」と言うと、エディタは「ケッ!」という顔をして向こうを向いてしまった。
随分前のことだが、いまのところエミネムは聴いたことがない。エディタの忠告は呪文のように僕を縛っている。
コメント