マスクスル主義

Helsinki 2012
Helsinki 2012

……「ところで、イギリスじゃ、マスクをしない女がいるそうですが、ほんとうなんですか?」
 「たいがいはそうしていますよ」私は彼にいった。「ただ、ほんの少数の女-どんなに極端なものでも最新の流行ならすぐに飛びつく連中だけが、マスクをしています」

フリッツ・ライバー「性的魅力」島五郎 訳(『バケツ一杯の空気』所収)サンリオSF文庫
Fritz Leiber, “Coming Attraction” (Galaxy, 1950)

最近、ヘルシンキに住む旧知の友人が「マスクシナイ主義」から「マスクスル主義」へ転向した。

西洋文化ではマスクの着用は没個性であり、個人主義の否定につながる、一種のタブーなのである、というのが「マスクシナイ主義」だ。

マスクで顔が隠れていたら、道端ですれ違う人が知り合いであっても、その人と気づかなければ挨拶もできない。

さらに、春先から夏場にかけて、人々がサングラスをかけるようになると、ほんとうに誰が誰だかわからなくなってしまうではないかと、わかったようなわからないような理屈もこねたりする。

ところが、この8月になって、新型コロナウイルスの対策として、それまで着用の効果に否定的だったフィンランド政府の「マスク政策」が「着用推奨」に変更されると、一転して、友人自身マスクを着用するようになったことを仄めかすようになった。

このように主義主張がはっきりしているようで、けっこう適当なところは、個人の性格もあるだろうけれど、あんがいフィンランド人に共通する国民的な気質なのではないだろうか。

ぼくも、友人の話を適当に聞いて、適当にコメントを返すだけなので、偉そうなことはいえないが、ときどきこんなのでいいのかと考えることもある。まあ知り合って17年たつけれど、これからも、適当にゆるく続いていけばいいなと思う。

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