夢で遭った友人ではなく、その家族から夢のすぐあとに連絡をもらったことがある。
フィンランドのタンミサーリの森に暮らす隠遁者の友人を訪ねる。玄関のドアを叩くが返事がない。嫌な予感がしたのでドアを破って中に入った。名前を呼びながら家中を探し回り、バスルームの湯船に彼の大きな体が沈んでいるのを見つけた。びっくりして人を呼びに行こうとしたところで夢から覚めた。
その朝、うちの奥さんに夢のことを話した。虫の知らせということもある。そろそろお迎えが来てもおかしくない年齢なだけに気がかりだが、まあ夢なのだし心配ないだろうとなった。
ところが、その翌々日ぐらいに、彼のガールフレンドからEメールが届き、彼が病院で亡くなったことを知った。肺がんでしばらく前から入院していたらしい。心配をかけたくないから、僕らには黙っていたということだった。
フィンランドから日本までの距離は7,000キロ以上ある。彼岸へ旅立つついでに、日本までひとっ飛び、顔を見に立ち寄ってくれたのかもしれない。
友人は冗談好きだった。夢に出て驚かせてやろうと思ったのだろう。夢の中であたふたする僕の姿を見て、声を枯らして笑ったにちがいない。
大瀧詠一の《夢で逢えたら》という曲があるが、この夢に限っては素敵な気分にはなれなかった。
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