フィンランドの友人が、京都の八坂神社で初めてお御籤を引いたときのこと。
「ナントイッテマスカ?」
彼が引いたのは「大凶」だった。
「ダイキョウトハナンデスカ?」
とても運が悪いので、気をつけようという意味だよ、と説明すると、サボンリンナの夏空の下に広がる湖のように青く透きとおった彼の瞳が、ヘルシンキの二月の曇天のようにみるみる陰っていった。
その後、神社の隣にある「餃子の王将」に連れていき、ラーメンと餃子を食べさせたら、ケロリと機嫌が直った。お腹が空いていてはポジティブな気分にはなれない。
それにしても、彼にとって人生初の、そしてたぶん一生で一度のお御籤が「大凶」とは、恐れ入る。「何かを持っている」とはこういうことなのか。ぼくは、ナマの「大凶」を見たのはそのときが初めてだった。八坂神社は大凶含有率が高いのか。
ところで、お御籤で一番好きなのは「吉」だ。「大吉」は(あるいは「大凶」も)、身の丈にあっていないというか、高級寿司屋のカウンターに連れて行かれた短毛の駄猫みたいにそわそわして落ち着かない。そういえば「吉」って、あまり引き当てたことがないような。本当のレア・アイテムは「吉」なのかもしれない。
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