フィンランドから日本に帰国したばかりの頃は、朝起きて自分がどこにいるのかわからなくなることがよくあった。近所から聞こえてくるおしゃべりが、フィンランド語ではないことに頭が混乱したりもしていた。
さすがにそういうことはもうないが、未だにフィンランドの夢はよく見る。フィンランド人たちと一緒にご飯を食べていたり、なにか仕事をしているような夢を。
とてもリアルなので魂だけが抜け出して、フィンランドに行っていたかのような錯覚に陥る。そんな夢から醒めたあとに、フィンランド人の友人から連絡があったりするから不思議だ。
友人が僕のことを夢に見たと、そのEメールに書いてあるのを読むと、本当に幽体離脱をして、フィンランドまで行っていたのではないかと思ってしまう。
こういう不思議をぼくは臨フィ体験と呼んでいる。そのうち帰ってこれなくなるかもしれない。まあそうなったらなったで、いいかもしれないけれど。
「ふざけてはいけない。旦那はここに寝ているではないか」と、妻は笑った。
陶淵明「離魂病」岡本綺堂訳(『書物の王国 11 分身』所収)国書刊行会
「いえ、旦那様はあちらにおいでになります」
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