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等比級数の回送電車

日々
Night Tram Helsinki 2005
Night Tram Helsinki 2005

同年代の友人に尋ねてみた。

─時間が経つのが速く感じない?
─感じる。
─ひょっとして太陽系になにか異変があって、地球の回転速度が上がっているんじゃ……。
─歳だよ。
─やっぱりそうか、ふう。

毎年同じことの繰り返しだ。
春だ桜が咲いた。夏は暑いなあ。嬉しいな食欲の秋だ。寒い寒い冬は寒いなあ。で再び春が巡ってくる。乗客のない回送の路面電車にうっかり乗ってしまい、同じところをぐるぐるしているような気分だ。

それでいて、去年の今頃何をしていたのか、すっかり忘れている。ただ、どうなんだろう。毎年、季節毎、新鮮な気持ちで生きている証拠と思えば、悪いとばかりも言えないのではないか。

そういえば、去年の今頃も同じ質問を同じ友人にしたような。でもまあ、そうだとしても向こうも忘れているみたいだから、いいのだけれど。

半世紀もかかってようやく見えてきた明晰な法則がある
つまり人生においては何事も
等比級数的に進行するということ

多田智満子「半世紀が過ぎて」 (『封を切ると』所収)書肆山田

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