九月半ばに

Syyskuu 2022
Syyskuu 2022

高校3年生のとき、自分の机の上に鉛筆で、なにやら魔法陣のようなマス目をひいて数字を書き込んでいる友人がいた。これ何?と近寄ってよく見てみたら、卒業までのカレンダーだった。一日でもはやく高校生活が終わって欲しいからな、と言いながら、前日までの日付を丁寧に消しこんでいた。カレンダーを眺めていても時間が経つのは変わらないと思うが、気持ちはわからなくもなかった。

ジム・ジャームッシュの映画『ダウン・バイ・ロー』に、似たような状況のシーンがあった。たしか、刑務所の壁に日数を消し込んでいるトム・ウェイツにジョン・ルーリーがイライラして突っかかっていく、というような場面だ。結局はその後、同部屋だったロベルト・ベニーニと共に三人で脱獄することになるのだが。

ふと、自分の人生がいつまで続くのだろうと思うことがある。いつかその日が来るには違いないが、それがいつなのかはわからない。残りのカレンダーがわかっていて消し込めたとしても、砂時計の砂が落ちていくのを見つめているようなものだろう。脱獄したところで、ジム・ジャームッシュ映画がそうであるように、風景はたいして代り映えしないかもしれない。

『ダウン・バイ・ロー』では、刑務所内でも能天気に明るいロベルト・ベニーニにとってはハッピーエンドとなる。トム・ウェイツとジョン・ルーリーは林のY字路で別々の道を歩んで行く、というところで映画が終わる。好きなラストシーンだ。

そうこうするうちに九月も半ばになっていた。自分で消し込むまでもなく、日々は淡々と過ぎていく。

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