
フィンランドに住んでたことがあるって言うと、まず、フィンランド?なんで?って訊かれる。
去年、地元の新聞社から取材を受けたとき記者からそう質問されて考え込んでしまった。きっかけはそれなりにあったにせよ、なぜ?と聞かれても。ムルソーのように「太陽のせい」と言うわけにもいかないし。で、適当にお茶を濁してしまった。話しながら何か違うな、申し訳ないなと思った。どうだった?フィンランドと聞いてくれれば話すことはたくさんあったのに。
そういうことがあるたび、なぜフィンランド?と自問自答してみるのだが、よくわからない。面白そうだったから、というのがたぶん一番近い答えなのだが、まず納得してもらえない。刑事から動機を追求される殺人犯のようだ。「なんでフィンランドなんだ、ドン!」「すみません、面白そうだったし、なんとなく……」「そんなわけあるかぁ!」
ところが、どうだった?って訊かれると、あら不思議、体験したこと感じたことをあれこれ話したくなるではないか。これが人情というものだ。「どうだった?殺ってみて」と訊かれて、容疑者が「どうもこうも大変でしたよ、刑事さん!」って身を乗り出してペラペラ白状したりとか。まあそれはともかく、聞き方というか言葉遣いって重要だ。なぜ?の答えが案外そのあたりに潜んでいたりするかもしれないのだから。


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