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#024 清水義範「国語入試問題必勝法」、正解の生産性向上

短篇小説
Liitutaulu

受験生の浅香一郎は現代文(国語)を苦手としている。見たところ三十代の半ばで、家庭教師というよりは仕事の完璧な工場の熟練工といった印象の月坂が、効率よく問題を解くコツを一郎に伝授する。

受験の成否は一定の時間内で、提示された沢山の問題をいかに効率よく正解できるか、にかかっている。すなわち正解の生産性で決まる。志望校合格には正解の生産性向上がかかせない。人材投資として、一郎のお父さんが家庭教師の月坂を雇ったのは的確な判断だ。

「きみはその問題を与えられて、まず問題文を読み始めたね。それが間違っている」
「でも、次の文章を読んで問に答えよ、と書いてありました」
「そんなものは意味のない決まり文句だよ。その通りに受け止めてはいけない。試験というものには時間のワクがあるんだよ。その少ない時間内で沢山の問題をこなさなければならない。だったら、受験者を悩ませようと用意されたややこしい文章をいちいち読んでいる余裕はないはずだ」

清水義範「国語入試問題必勝法」(『国語入試問題必勝法』所収)講談社

人生にも時間のワクがあり、その少ない時間内で沢山の問題をこなさなければならない。上司(あるいは部下)、奥さん(または夫、ここは人によっていろいろ)のややこしい話をいちいち聞いている余裕はないはず、なのだけれど。

まとめると、受験はコツをつかめば簡単だが、本当に大変なのはそのあと


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