高校生になったばかりのころ近眼になってしまい、それからというもの眼鏡を使っている。20代のとき、少しだけコンタクトレンズにしてみたことがあるけれど、昼寝をする度にいちいち外さなければならないのが、とてもわずらわしくて、すぐにやめてしまった。
つい最近、Lunor(ルノア)というドイツの老舗ブランドの丸型眼鏡を買った。手元が見えにくくなってきたし、近眼も少し進んできて、裸眼での被写界深度がだいぶ浅くなってきたから、というのは言い訳で、本当はこの丸型眼鏡が欲しくなってしまったからだ。
それまで使っていたのは、30歳ぐらいのときに買った999.9(フォーナインズ)という日本のブランドで、少なくとも15年以上ずっと僕の顔の一部でありつづけ、弱い視力を補ってきてくれた。そのオーバル型のデザインは今でも気に入っているし、フィンランドに住んでいた時もずっとかけていてたので愛着もある。
ただ、僕は『グラン・ブルー』のジャン・レノが好きで、彼のかけていた丸型眼鏡をいつかかけてみたいという、というぼんやりとした憧れみたいなものがあった。
先月から名古屋市美術館でやっている『藤田嗣治展』のプレイベントで観た、小栗康平監督の映画『FOUJITA』の中でオダギリジョーがかけていた丸い眼鏡もよかった。それになんとなく影響を受けたのかもしれない。
僕が買った Lunor の眼鏡は、スティーヴ・ジョブズのモデルとして知られる丸型の眼鏡だ。ジョブズの御眼鏡にかなったのもうなずける、シンプルで美しいデザインだ。
ジョブズの信奉者ではないし、今ではMacユーザーでもない。当たり前だけれど、彼と同じタイプの眼鏡をかけたからといって、ジョブスのようになれるわけでもない。それに、僕はオダギリジョーのようにハンサムでもないし。
眼鏡を変えたからといって、急にものの見方や人間の何かが変わるものでもないだろうけれど、ちょっとした変化が、時には人生の中にあってもいいんじゃないかと思う。
うまく言えないけれど、ちょっと楽しくていいことが時々あることで、いつの間にか、ものの見方が微妙に変化し、そのうち深いところで何かがとてもゆっくりと変わっていくというようなことが。
実際、オーバル型の 999.9 の眼鏡から丸型の Lunor に変えてみて、視野が広がったというか、それまでとは少し違った世界を見ているような気がする。
また、他の人から見た僕の印象もだいぶ違って見えるらしい。すでに僕の中で何かが変わったのだろうか。ちょっと急すぎるような気もするが。
「ヴァージェンス」という、名古屋の眼鏡屋でLunorを買った。個性的でおもしろい形の眼鏡がたくさんある。
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