ぼくら夫婦は、フィンランドのタンペレ郊外とカーリスで2年ほど過ごしたあとの2005年、ヘルシンキの美術学校Taik(現アールト大学)の写真学科(Non-degree)に入学願書を提出した。
提出書類には、課題のポートフォリオとともに、語学力を示す書類が必要だ。要求される英語のレベルは、IELTSのスコアが6.0ポイント以上だった。
英語については、IELTSのスコアとケンブリッジ英検のFCEの合格証書を添付した。フィンランド語については、在籍していた語学学校のフィンランド語の先生に頼んで、美術学校宛にスキルを証明するレターを書いてもらった。
Curriculum Vitae(CV)には、言語スキルを自己申告する欄がある。能力に応じてFair(ほどほど)、Moderate(そこそこ)、 Fluent(ペラペラ) などと書き込むことになっていた。
提出するCVには、フィンランド語は「ほどほど」、英語は「そこそこ」と記入した。でも本当は「ほどほど」と「そこそこ」の間ぐらいだった。その2年ほど前、フィンランドの国民学校に行く際に受けたTOEICは、500点にも達していなかった。
その後、いくらかはマシになったものの、IELTSのスコアはやや心もとなく、こんな語学レベルでは無理なんじゃないかと不安だったが、二人とも写真学科に入ることができた。提出したポートフォリオがそれぞれ評価されたからだとは思うが、何がどう評価されたのかよくわからない。
審査員の中にちょっと変わった人がいて、「フィンランド人とも他のユーロ圏の学生とも異質そうだし、たまにはこんなのも面白そうだ。英語はほどほどだが、ポートフォリオはそこそこだから、試しに入れてみよう」と考えてくれたのかもしれない。
なんにせよ、日本に帰国していた7月、フィンランドから国際便で合格通知を受け取ったときは嬉しかった。でもよく考えたら、Non-degreeとはいえ、夫婦揃ってフィンランドで名の通った美術学校に入ることができたのは、ほとんど奇跡だったのかもしれない。奇跡ってあるものだなと思った。
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