とある中古レコード店でBGMがかかっていた。懐かしい曲調の馴染みのあるボーカルだ。
カウンターには、BGM中のCDケースがディスプレイされている。マリオ・ジャコメッリの写真のようなハイコントラストなモノクロ・ツートンのジャケ写だ。
でもよく見たら、そこには輪になって踊る神学生たち、ではなく、いかにもロンドン[1]なんかのダウンタウンにいそうな、イキったあんちゃんらが、上目遣いにガンを飛ばしていた。スペシャルズのファースト・アルバム、The Specials (1979) だった。
CDケースを見せてもらいながら、店員のにいちゃんに「死んじゃいましたね」と話しかけると、一瞬、間があって「テリー・ホール、ですよね」と返ってきた。
「ええ、去年の暮れでした、びっくりしましたよ」と言うと、すぐ横で作業をしていた別の店員さんが「ジェフ・ベックも昨日……」と加わってきた。
「ああ、そうでした。あんまり死んでほしくないんスけどね」
「でもまあ、人はいつか死にますから」
「そうなんスけど、最近多くないっスか」
こんなことを話している自分らも、いつか死ぬ日がやってくる。今を楽しもう。
「じゃあ、これ、お願いします」
「110円です」
安いッス!
脚注
1.∧バンドはイングランドのコヴェントリーで結成。
It is with great sadness that we announce the passing, following a brief illness, of Terry, our beautiful friend, brother and one of the most brilliant singers, songwriters and lyricists this country has ever produced. (1/4) pic.twitter.com/qJHsI1oTwp
— The Specials (@thespecials) December 19, 2022
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