W・G・ゼーバルト
大学は出たけれど、参天製薬の大学目薬
参天製薬の大学目薬 進行性の失明ではないかと私は動転した、そしてそのかみ、十九世紀に至るまで、ナス科植物のベラドンナから抽出した目薬を、女性のオペラ歌手は舞台に上がる前、若い娘は求婚者に引きあわされる前に、網膜に二、三滴垂らしたものだという...
最上階の哲学者
Pimiö, TAIK Helsinki 2005 そのほか夜行獣館の動物については、何匹かがはっとするほど大きな眼をし、射るような眼差しを投げていたことだけが記憶にとどまっている。その眼差しは限られた画家や哲学者たちの、ひたすら眼を凝らし...
ライムストーン線
Vuosaarenhuippu Helsinki 2005 Yの字を右に傾けたような形をしたヘルシンキ地下鉄の路線図で、右下端の終着駅であるVuosaari駅から、北に徒歩1時間ぐらのところに、ライムストーンの古い採石場がある。 そこを見た...
ヘルシンキ空港における入国審査官とのスモールトーク
Tampereen Kauppahalli Finland 2004 チューリヒ発の飛行機を降り立った客は十人ほどだったというのに、リングウェイ空港で荷物が上がってくるまでに小一時間、それから税関を出るまでにさらに一時間がかかった。という...
グレー色の空
keskiharmaa 色という色、形という形がパールグレーの靄(もや)に溶け、明暗も色の濃淡も失われて、輪郭の定かならぬ、光だけが息づく階調が存在するようになるのです。すべてがおぼろに霞む中で、ほんの一瞬なにかの影がふっと浮かび上がるー今...