フィンランドから日本へ帰国する際に、ひょんなことからフィンエアーのビジネスクラスに乗ったことがある。
そのときもらったアメニティキットに、青白ツートンカラーの、洗濯バサミ形のしたクリップが入っていた。ちょっと小さいが、あえて洗濯バサミとして使うこともできそうだ。
フィンランドにいた頃、どういうわけか、洗濯ロープに留まっていた木製の洗濯バサミが面白くて、たくさん写真を撮った。日本ではそんなことはまったくないのに不思議だ。あまりの熱中ぶりに、まわりのフィンランド人たちからは、日本には洗濯バサミがないのか、と呆れられていた。
ある著名なイギリス人写真家が、初めてフィンランドを訪れた際に、やはりフィンランドの洗濯バサミに嵌ったという話を聞いたことがある。フィンランドの洗濯バサミには、外国人の心をつかむ不思議な魔力があるのかもしれない。
アキ・カウリスマキにとっての小津映画における赤いヤカンのように、ぼくにとっては洗濯バサミが、フィンランドの原風景を象徴するアイコンになっている。
写真はたくさん撮ったけれど、本物のフィンランドの木製洗濯バサミは手元にはない。洗濯バサミを探しに、いつかまたフィンランドへ行きたいと思った。フィンエアーのアメニティキットは、乗客の、少なくとも一人の日本人の心をフィンランドに留めておくことに成功している。
洗濯バサミはフィンランド語でPyykkipoika。ランドリーの男の子、という意味になるだろうか。女の子のtyttöではなくpoikaというのがいいなと思った。
小さいけれどちょっとするとすぐに飛び跳ねてどこかへいってしまう、元気のいいフィンランドの男の子みたいだ。
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