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ユーザーのアクセスキー

フィンランド
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セントラルヒーティング

通常フィンランドの暖房は、セントラルヒーティングを通じて各部屋のラジエーターによって賄われる。日本の炬燵、灯油ストーブ、ガスヒーターなどはフィンランドでは見たことがない。

以前、2月のフィンランドに友人夫婦の暮らすアパートを訪れた際、ビルのセントラルヒーティングが故障するという惨事に見舞われた。折しもシベリア発の最大級の寒波がフィンランドを襲ったタイミングだった。室内は日中で10度以下だったと思う。台所のカップボードに氷柱が発生することもあるんだ、という友人夫婦の寒さ自慢も大げさではない。

夜までにマンションの管理会社から電気カーボンヒーターの配給を受け凍え死なずにすんだ。セントラルヒーティングが正常に作動しないということが、文字通り生命の危険に直面するということを身を以て体験した。北欧フィンランドにおいて、暖房は水道や電気、通信などとともに基本的な生活インフラの一つなのだ。

セントラルヒーティングの管理はビルのオーナーの責任だが、各部屋のラジエーターについては住人が各々手動で手入れする。といっても実際はラジエーターの配管内に発生する気泡を抜くことだけなのだが。

気泡発生の原理はわからない。そのままでは暖房の効きが悪くなるので、専用の小さなキーで、ラジエーター上部にある小さなツマミを回し、溜まった空気を抜いてやる。開きすぎると配管内の油を含んだような謎の液体が噴出してしまうので慎重にキーを回さなければならない。

ラジエーターキー

フィンランド滞在も3年目となり、タンペレやKarjaaの国民学校での寄宿舎生活から、ヘルシンキでアパートを借りて暮らすことになったとき、購入品リストの最優先アイテムとしてリストアップしたのが、この専用の小さなラジエーターのキーだった。

ところが入手しようにも、キーの具体的な製品名がわからない。知り合いにきいても、フィンランド人あるあるで人によって言うことが違う。近所のスーパーやヘルシンキ中央駅前のSokosやStockmannを探してみたが見つからなかった。

各家庭での保有率はほぼ100%の必需品のはず。人口あたりの保有率は銃よりも高いことは間違いない。きっと、フィンランド人にっては、家にある棚のどこかの引き出しを開ければ中に転がっていそうな、あまりにもありふれたモノなのだろう。

どこにでも売っていそうなのにどこにもないモノ。カフカの小説『城』の主人公Kのような気分でラジエーターキーを探した。その割に結局どこで買ったかも覚えていない。たぶんヘルシンキのどこにでもあるどこかのキオスキで買ったような気がする。

この前、文机の引き出しを開けたらそこに転がっているラジエーターキーを見つけた。当時フィンランドでインフラの末端ユーザーとしてのアクセスキーを手に入れた気になり、フィンランドに暮らしているんだなという妙な実感が湧いたことを思い出した。キーでツマミを回すとシュッすかしっぺみたいな音をするのが楽しくて何度も使っていた。

久しぶりにキーを手に取ってみた。ふわっと油っぽいにおいが鼻にまとわりついたような気がした。

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