ハロウィーンの日に箱に入っているのはお菓子だけであって欲しいものだが、そうとも限らない。
ハロウィーンの日に研究所から盗まれたプルトニウムの入った小函を探し出す、アシモフのショートショート・ミステリー。犯人が死ぬ間際に残した「ハロウィーン」というメッセージを唯一の手ががりに、プルトニウム入り小函の隠し場所を探索するのは「ヘンリー」ではなくヘイリー。
「それから長い時間きみたちの眼をくらませていたのか。プルトニウムは小函に入っているから、二十九階、各階九十室もあるホテルのどこかに隠せる──廊下、オフィス、厨房、地下室、屋根──それをわれわれの手で探し出すのか? プルトニウムがわずかな量とはいえ、町なかに持ち出されるのは阻止することだ。そうだな?」
アイザック・アシモフ「ハロウィーン」仁賀克雄 訳(『恐怖のハロウィーン』アイザック・アシモフ編 所収)徳間文庫
Halloween : Isaac Asimov
例えば『黒後家蜘蛛の会』でヘンリー以外のメンバーが繰り出すハズレ解答のような、語呂合わせ的なオチがこの小説ではかえって清々しい。
たまたま訪れた東京の神保町で「第59回 神田古本まつり」に遭遇した。靖国通りに出ていた西荻窪 盛林堂書房の屋台で、人垣をかき分けて見つけた短篇集『恐怖のハロウィーン』からの一篇。その夜、飯田橋のホテルでこれを読んでいて、おもわず10階自室のルームナンバーを確認してしまった。
32年前の「徳間文庫 10月の新刊」の帯には「空想は飼いならせない。」のキャッチコピーがある。その背後では若き日の内田裕也が睨みを利かせていた。
じつぷり
内田裕也といえば、『十階のモスキート』という映画を中学生の時に映画館で観たことがある。パソコンのモニターを放り投げるシーンが印象的だった。「10」という数字は何かと不穏で意味深な数なのかもしれない。
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