今年の六月に、フィンランドに持っていたダンスケ銀行の口座を閉鎖した。
フィンランドで暮らしていた2003年から2006年までの3年間と、その後休眠口座の時期も含め、約16年間お世話になった。当時はまだ、フィンランドっぽいのんびりした響きのサンポ銀行(Sampo Pankki)という名前が、いつのまにか、銀行を意味するフィンランド語の頭文字がPではなくBで始まる、いかにも外国の銀行といったダンスケ銀行(Danske Bank)にすり替わっていた。
フィンランドで初めて自分たちの銀行口座を開くため、渡芬まもない九月のある日、ぼくと妻の二人で、タンペレのHämeenkatu沿いのSokos前にあったサンポ銀行の支店の重い扉を、おっかなびっくり開いたときのことを思い出す。銀行の女性担当者はぼくらのたどたどしい英語にもかかわらず親切に対応してくれ、テキパキと手続きをしてくれた。
フィンランドを離れてからは、ユーロ圏でのネット通販やフィンランドの友人との決済などに細々と使っていた口座を、 思い切って閉鎖することにしたのは、 月々の口座維持手数料に対する利用頻度がどうこうというよりも、ブレグジットとか令和になったことによって、なんとなく区切りをつけたい気分になったからだ。
数年前にフィンランドの母校で行ったワークショップ講師の報酬の一部を含め、800ユーロほど口座に残っていたので、残高全部を日本円に両替して、三菱UFJ銀行の口座に送金してもらうことにした。
ダンスケ銀行の担当者とネット経由で数回やり取りをし、こちらから必要書類をPDFファイルで送付すると、口座閉鎖と送金の手続きはあっけなくすんでしまった。
それから数日後、三菱UFJ銀行の、ATMが吐き出す通帳に印字された「外為送金」の文字と、10万円ほどの入金と引き換えに、フィンランドでの体験が夢の中の出来事になってしまったようで、少し寂しい気分になった。
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