ひとつの画布を私はいつも空から始める…私の好きな画家? 同時代に関して言えば、ドラクロワ、コロー、ミレー、ルソー、クールベが私の師匠である。みなが自然を愛し、力強く真摯に感じている。
アルフレッド・シスレー / 図録「IMPRESSIONISM AND BEYOND 」より
『印象派からその先へ』と題された展覧会が、平成31年4月9日から名古屋市美術館で始まった。吉野石膏コレクションから、72点の作品で構成された展覧会は、知った気になっていた西洋近代絵画を新鮮な目で捉え直すいい機会だ。
なかでも、アルフレッド・シスレーの絵画に出会い直すことができたのが個人的にはよかった。出会い直すといっても、そもそもシスレーの絵を今までしっかりと観たことがあっただろうか。
とくに『ロワン川沿いの小屋、夕べ』と題された油彩の、65x81cmの画布上半分を占める青い空と、そこに浮かぶ白い雲の風景に強い既視感をおぼえ、目が離せなくなった。
フランスはおろかモレ=シュル=ロワンには行ったことはない。にもかかわらず、名状しがたい懐かしさを感じたのは、その透明な青空にフィンランドの空気を重ね合わせて観ていたからなのかもしれない。
フィンランドに暮らしていたときは、いつでも見ることのできた、おだやかで静けさに満ちた夏空を思い出し、絵の前で思わず深呼吸をしていた。
でも本当のところは、どれだけフィンランドで空を見ていただろうか。シスレーの絵を観て、まるで古い友人に出会い直すことができたような、そんな清々しい気持ちになった。
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