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#032 ハードボイルドな頭の体操、トマス・フラナガン「アデスタを吹く冷たい風」宇野利泰 訳

短篇小説
 Helmikuu, Opistontie Finland 2012
Helmikuu, Opistontie Finland 2012

大学生の頃よく観ていた、フジテレビ深夜のクイズ番組『IQエンジン』を思い出す。大高洋夫、勝村政信、筧利夫、筒井真理子など、鴻上尚史の主催する第三舞台の役者さんが多く出演していた。

「夜中ですが、頭をお使いください」というナレーションが意地悪だったりする。「使っているんだけれど わからないんだよな」と、深夜独り言ちていた。

 ジャレル大佐は、テナントの顔を見上げた。少佐もまた、相手の指のさきを、熱心に追っていた。
「そこでだ、銃が事実存在するとしたら、トラックで山から運び下ろすことにもなろう。ところがトラックは、葡萄酒のほかになにも積んでいない。いったいこれは、なんのことなのだ。君にその意味がわかるかね?」

トマス・フラナガン「アデスタを吹く冷たい風」宇野利泰 訳(『アデスタを吹く冷たい風』所収) ハヤカワ・ミステリ文庫
Thomas Flanagan, “The Cold Wind of Adesta” (1952)

答はきっと単純なことにちがいないのだが、わかりそうでわからない。作者のトマス・フラナガンからハードボイルドな調子で「頭を使ってください」といわれているような気がした。


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