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#025 ジョー・ゴアズ「真紅の消防車」、虫や動物の比喩が楽しいハードボイルド

短篇小説
Fire engine / Stockholm 2003
ストックホルムの消防車 / 2003

厳密に神学上の問題を除いて、<DKA>は十戒を侵犯する事件のほとんどすべてを扱っている。専門は、銀行、保釈金積立代行業者、民間企業、保険会社などのために、失踪人を追跡したり、動産、あるいは財産を回収する仕事だった。

ジョー・ゴアズ「真紅の消防車」石田善彦 訳(『ダン・カーニー探偵事務所』所収)新潮文庫

私立探偵社<DKA>ダン・カーニー探偵事務所の敏腕調査官パトリック・マイクル・オバノンは、「滞納金全額および経費を集金するか、ブツを回収せよ」という指示書にしたがい、2631ドル55セントの月賦金未納分として、マリン郡ラマララ・ヴァレー地区の真紅の消防車によじのぼり、イグニッション・キーをポケットに納め、差し押さえを実行する。

ブツの回収に成功したのはいいが、その時ちょうどガーデン通りのレッド・ウッド造りの高級アパートで火事が発生する。オバノンは自ら消防車を運転し火災現場に駆けつけると、火事現場に飛び込んで人命救助までやってのける。

「なにをもたもたしてるんだ、新米ども。おまえらは蜘蛛でも飼ってやがるのか?」や、「蚤にたかられたテリアのように足を踏みならし、消防車のまわりを駆けまわり、吠えたてていた」とか、「怯えきった兎のような眼をしてうずくまっている三歳の女の子を見つけ」などの虫や動物の比喩に思わず「ふふふ」となる。英語の原文はどうなっているのだろう。

オバノンにスティーブ・ブシェミを、「すらりと背が高く、美人で頭の回転の速いブロンド」のジゼル嬢に、峰不二子をどうしても重ねてしまう。
オフビート感溢れるハードボイルド・ミステリ。


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